ブランディングってどういう意味ですか?
これから経営者として、責任者として、個人事業主として、もしブランディングに取り組もうとされるのでしたら、是非、ブランディングって言葉の定義があいまいだってことをまず覚えていてほしいです。
いわゆるバズワードの一つだと思います。
明確な定義はないけど、なんとなく雰囲気が伝わる言葉。
デザイナーやコンサルが企画書で便利に使っている言葉。
インフルエンサーや情報商材屋が持論を展開するために有効な言葉。
「ブランディング」
ググれば数多くの説明が出てきて、カタカナワードでカッコよく教えてくれる。私も仕事柄、本を読んだり、ブログを読んだり、動画を見たり、カタカナワードとじゃれ合ってきました。
なんか、かっこいいですもんね。
つい使いたくなっちゃいます。
でも、考えれば考えるほど、そして使えば使うほど多面的な言葉だと思うようになりました。
ここで、今現在の私の考えるブランディングを整理してみたいと思います。
ビジョン
ブランディングを調べたときに出てくるカタカナ。その中でひときわ異彩を放つのが「ビジョン」です。
なんとも香しきも気高いワード。
もうなんかすでにキラキラしています。
そして「ビジョン」の従順なる従者「ミッション」。
まだ物足りない人には「コアバリュー」を召喚しますか!
どう違うの?
私も、何度も調べました。
いろんな解説があって、結局よくわかりませんでした。
今では私なりの定義をしていますが、その定義が一般的かどうかはわかりませんし、伝わらないことの方が多いです。
ただ言えることは、ビジョンってなんかかっこいい。もうこれは素晴らしいデザインのブランドバッグ、精密な意匠の高級腕時計、最小回転半径のやたらデカいSUVと並べても見劣りのしないステータスだと、私は本気でそう思っています。
「あなたの会社のビジョンは何ですか?」
その問いに対して熱く語ってくれる経営者のイメージは、ブレの少ない合理的な判断力と決断力、そして周りを率いる統率力を持っている方、というイメージです。
なので、われわれデザイナーも注目します。
特に会社案内やコーポレートサイトなど、その組織、法人そのものを表現するものを制作するときは、ビジョンがなくてもヒアリングでそれらしいものを探ります。
社訓や社是では倫理観が中心になっていることが多いですが、もちろんそれも重要なものです。もしくは経営者個人の座右の銘からイメージを広げていく事もあります。
ビジョンという形で明文化されていなくても、それに準ずるもの、どこに想いをもって経営していらっしゃるのか。
それを探ることからデザインをしてく。
僕はずっと、それが正しいアプローチだと思っていました。
ですが最近、その考えを改めなければならないと思い始めています。
AI・ノーコードが変えるリソースとコスパの関係
従来からブランディングに関するデザイン制作や情報発信を内製化してコストダウンするという話はありました。ですが、必ずネックになるのがスキルです。人件費と言い換えてもいいかもしれません。
デザイン制作はやはり専門的な技術が必要な分野です。その学習にどれくらい時間がかかるかがコストに直に跳ね返ってきます。一人前になるのに10年とか平気で言っていました。内製スタッフのデザインスキルのために10年も経験積ませるなんてことは、経営規模に余裕がないと出来ません。なので、スモールビジネスではどこまで内製化するかは常にシビアな問題でした。
我々のサイト制作の提案でも、どこまでを社内でして、どこまでを外注にするかはとても重要なポイントです。
30年前なら外注一択だったと思います。
その後、ブログ、SNS、ネット印刷、クラウドのノーコードツール、スマホと技術が目まぐるしく拡張していって、最近はAIの話題でもちっきりです。
これらの変化を図で表すと以下のようになります。

簡単に言いますと、プロでなくては出来ない領域がへり、誰でもできる領域が広がりました。プロに頼んでコスパを出すには、ある程度難易度の高い事、専門的知見のいる事に限られていき、パソコンが得意、いやスマホを使えれば出来るってことがどんどん増えていっています。
では、ブランディングはどうでしょうか。
普通に考えれば、専門的な知見のいる領域です。
しかし、ここにマーケティング的な成果を重ね合わせると変わってきます。

従来ではコストの問題でできなかったマーケティング戦略が、AIやノーコードツールのおかげでできる可能性が出てきました。
つまりは、デザイナーの経験によらなくても、手数とその分析というマーケティング的なやり方が極めて有効だと考えられるゾーンがどんどん拡張していっているのです。
逆に言うと、従来はコストをかけないと十分な制作物が出来なかったため選択肢が少なかった。ですので従来の中小企業はブランディングではなく、体裁を整える必要がある時はデザイナー先生を召喚し、販促のためには広告を使うしかありませんでした。
それが一番コスパが良かったんですね。
状況が変わり始めるのがSNSとスマートフォン、ブロードバンドが普及し始める10年ほど前です。
従来の手法とは違う選択肢がでてきました。
それでも「デザイン」するには専用のソフトが必要で、そのための知識が必要でした。
その状況を大きく変えようとしているのがAIです。
2025年6月現在、今はまだそんなツールはありません。
このあとどれくらいかかるかも正確にはわかりません。
ですが確実に誰でも「デザイン」できる領域は広がっていっています。
その変化がもたらすのが、上記のグラフです。
従来ならコスパが悪くてできなかった戦略、「デザインを量産して手数を打つ」がどんどんできるようになっていっています。
そこでは従来のブランディングではないブランディング戦略が可能になります。
ビジョンやミッションではない、マーケティング主導のブランディングです。
マーケティング主導のブランディング
皆さんは「デザイン思考」という言葉をご存じでしょうか。
まぁ、これもブランディングと同じバズワードの類に見えますが、一応ちゃんとした定義のある言葉です。
といいますか、とあるデザイン系の学者というか経営者が提唱した概念で、ググると同じような解説ばかりちゃんと出てきます。
デザイン思考では起点になるのはユーザーとの共感です。
ビジョンやミッションではありません。
ユーザーが何を望んでいるか?がスタートラインです。
これと似たようなものにユーチューバー思考があります。
これは今僕が適当に考えた言葉なので定義はありません。
当たった動画が正解、当たらなかった動画が不正解、という検証をひたすら繰り返していく方法論です。
どちらも、ユーザー主導です。
この手法は行ってでは決まりません。
いわゆるPDCAサイクルをどんどん回していくという手法です。
打率2割でも人の倍打席に立つという考え方です。
野球は9階までと決まってますが、ビジネスはやったもの勝ちですからね。
さ、そこで先ほどの技術的な事情です。
AIやノーコードツールの進歩で、ひとつの手数を打つためのコストが大幅に下がりつつあります。
従来は外注して乾坤一擲の気功砲を一発はなっていたのが、これからは一人のスタッフが百裂拳を放つようになるわけです。
PDCAサイクルとグルンぐるんに回せるんです。
ターゲットも細かく選定できます。
例えば、朝、昼、夜でチラシを変える。
男性用、女性用で表現を変える。いや、もっと年齢も含めて細かく変える。SNSで使い捨ての期限の短い投稿を乱発する。
従来ならとてもコストが合わなくってできなかったことが、できちゃうじだいがじわじわっとやってきています。
ビジョンは不要か?
結論から言えば、もちろんノーです。
ビジョンが激烈に役に立つシーンがあります。
それが組織化、チームビルディングです。
多様性の社会、物理的なモノのあふれた社会では、人はもはや情緒なしには動きません。
感情の時代です。
共感がとても重要な時代です。
スモールビジネスでもパッションが重要になってきます。
でもパッションは属人的すぎます。
一人の人間が全員を率いるというスタイルなら問題ありません。
でも再現性や自律性のある組織運営を、チームビルディングをしていくには、社内外のステークホルダーに組織としての「パッション」を見える化していく必要が出てきます。
それを僕は企業文化としてのブランディングと呼ぶことにしました。
これが必要になるのは次の要素を満たす場合です。
地域密着や消費者参加型のサービスなど人間関係を伴う「共創」を展開する場合。
社員が自律的に企業運営に参加するような社内での「共創」を展開する場合。
トップダウンでワンマン経営をするには必要ありません。それは社長の人間力だけで大丈夫です。社長の目の届かない範囲へと事業を広げていきたい時に、組織の関係者が共通認識として抱く、「価値観」もしくは「人格」を具現化する必要が出てくるわけです。
これはPDCAサイクルがどうこうという話ではありません。
エデュケーションとコミュニケーション、そのフィードバックから構築してくブランディングです。
要はブランディングとは
チームビルディングが必要ならビジョンが必要。
マーケティングだけならユーザーに聞こう。
まずはこの二つに要約できると思います。大企業も、マスも、中小企業も、個人事業も、口コミマーケティングも、どぶ板マーケティングも、SNSも。
次に、
チームビルディングなら丁寧に時間をかけて。
マーケティングなら手数を打って。
AI時代で内製化革命が進んでいけば、マーケティングのための手数に関するデザインコストが激変する可能性があります。
でもチームビルディングをするなら、コミュニケーションにしっかり時間と手間をかける必要があります。
全くと言っていいほど違いますので、もし皆さんが誰かのアドバイスを聞いてブランディングしようと思ったなら、その人がどういうニュアンスでこの言葉を使っているかに注視してください。
そして言葉の定義の整理をまずしてください。
そして是非、最適なブランディング手法に取り組んでください。
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