カテゴリー: デザインにできること

  • デザインにできること「#3 デザイナー的思考??」

    デザインにできること「#3 デザイナー的思考??」

    前回はデザインという言葉について考えてみました。

    今回はさらに掘り下げて、デザイナー的思考について考えてみます。

    #3デザイナー的思考??

    先ほど経産省の「デザイン経営宣言」という取り組みを紹介しましたが、正確には特許庁なんですよ。要は独自サービスをどんどん作って知財をどんどん増やしなはれ、ということなんだと思います。それ自体は和割れれデザイナーにとっては歓迎すべきことですし、ぜひにも、どしどし取り組んでいただきたい。

    ですからなおのこと、より正確に言葉を把握していきたいと思います。

    この「デザイン経営宣言」はデザインのチカラを積極的に経営に生かそうという宣言エス。ブランディングして差別化とか、イノベーションとかデザイナーは基本的に他の人と違うことを考えるのが生きがいみたいな人が多いのでもってこいなんですよね。

    詳しくは経産省のホームページをご覧ください。

    >>兼参照サイト「特許庁はデザイン経営を推進しています」https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html

    ただ、ここで気になることが一つあります。

    デザイン経営ハンドブックなるものには「「デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための“デザイン経営”ハンドブック」は、デザイン経営のビジネスでの活用のため、「そもそもデザインシンキング(デザイン思考)とは何なのか?その意義と価値はどこにあるのか?なぜ、それがいま大事なのか?」に対する考え方や、デザイン経営を導入するにあたっての8つの課題などを具体的に記載しています。」と書かれているわけです。


    ここで「デザイン思考」という言葉が出てきます。

    「デザイン思考」は1990年代にアメリでフレームワークとしてまとめられたもののことを指すのが一般的です。デザインの思考についての研究はもっと古くからあり、さらに現代でも引き続きされているので、厳密にはいろいろ議論があるようです。

    一般的に「デザイン思考」はある一つのフレームワークのことを指します。検索するとデザイン思考についての書籍がいっぱい出てきますが、多くがその解説本になっています。

    デザイン思考は簡単に言いますと「答えのない課題解決に向いたフレームワーク」です。

    手順は
    1.人の話を聞く
    2.課題を定義する
    3.課題を概念化(分解?)する
    4.解決策の試作をする
    5.その試作をテストする

    で、テストの結果をまたヒアリングして、課題が解決していなければ未解決の部分を定義し、概念化し、試作し、再テスト・・・となります。

    ですので、デザイン思考はよく、プロダクトデザイナーが新製品を開発するときのプロセスを課題解決用にフレームワーク化したものと説明されています。

    つまり、デザイン思考とは、物事の解決手法を、デザイナーの思考法を分析した方法を使って、誰でも再現し、ビジネスなどに応用できるようにしたものです。

    つまり、デザイナー以外が使う可能性があることを前提なのです!!

    ゴルフのドライバーに「プロ」とかついているのと同じです。

    一般の方が使う前提の言葉です。

    ですが、デザイン経営とはデザイナーの能力を活用して問題解決・・・すなわり「目に見えるデザイン」を経営に活用することを中心に据えています。(もちろんそのプロセスで概念をデザインすることになるとは思いますが。)

    ですので、厳密には「デザイン経営」はべつに「デザイン思考」を前提に作られてはおらず、もうすこし広く捉えているようです。デザイナーの能力もデザイン思考も経営に有効活用して知的財産を増やしていく事で競争力を上げられるという感じなんだとおもいます。

    そういうことを推進するって事で経産省の公式ハンドブックにさえ言葉の混乱が見られるわけです。他の実例やコンテンツではデザイン思考にあまり触れていないので、本当に単なる言葉の定義の曖昧さゆえになのだと思います。

    ここで言いたいのは、言葉の定義にうるさそうなお国の取り組みでさえ、正確性を欠いているということです。それほど日本語に染み付いた「デザイン」という言葉の語感と、本来「デザイン」という言葉が持っている定義の広さには乖離があるという事です。

    たとえば、このデザイン思考を積極的にデザイン制作に取り込んでいるデザイン事務所もあります。またデザイン思考自体はわりと普通にデザイナーがしている思考でもあります。ですが、全てのデザイナーが知っている概念でもなければ、使っていないデザイナーもたくさんいます。
    デザイナーでさえ、デザインという言葉の定義は曖昧なのです。

    ちなみにですが、デザイン思考を説明できないデザイナーの方が多数派のはずです。デザイン学校でも習ってない人の方が多いと思います。

    ですので、デザイン思考を知らずにデザイン思考をしているデザイナーもまた多くいると思われます。独自のカスタマイズをした、そうですね、デザイナー的思考としておきましょう。

    あらためて、われわれデザイナーこそ、言葉の定義についてもっと発信していかないといけないと思いました。
    というわけで、どんどん発信してくと改めて決意を固くしました。

    次回は、われわれデザイナーから見て、中小企業でどうデザインを活用してほしいと考えているかについてです。

  • デザインにできること「#2 デザインという言葉」

    デザインにできること「#2 デザインという言葉」

    前回は初回ということで、デザインに出来る事を見てみました。

    今回はデザインという言葉について考えてみます。

    #2 「デザイン」という言葉

    デザインという言葉が現在のような意味で使われ出したのは産業革命以降と言われています。大量生産が始まってからです。
    ですが、デザインそのものはパルテノン神殿やピラミッドをみれば、紀元前何千年からはっきりした形であり、もっと以前の石器や土器にそのルーツは十分見て取れます。

    目的のために意図をもって造形をする。
    これは紛れもなくデザインです。

    ただ、当時の人々はそれを「デザイン」と思って仕事はしていなかったと思います。ただ目的のために、機能のために、祭祀のために、威厳のために、権威のために、神の祝福を受けるために作っていたのだと思います。

    それが、産業革命になると、モノづくりの仕組みが変わってきます。
    それまでは一つ一つ手作りだったものが、大量に生産し、それを一般市民が大量に消費していくようになります。

    また活版印刷などで紙媒体のコストも変わってきます。

    大衆文化の発展と共に、看板やポスターも発展していきます。

    その過程で、専業としてのデザイナーが生まれ、出版や広告業といった情報をあつかうビジネスも発展していきます。

    やがてそれはテレビやラジオにつながり、メディアと言われるものになっていきます。

    そのような過程があるため、いわゆるデザイナーの仕事は大量生産するものの費用対効果を考慮しながら意匠を作る者という、現在一般で思われているであろう定義になっていきます。

    ヒット商品をデザインしたデザイナーや、売り上げに貢献した広告を作ったデザイナー、価格破壊をするイノベーションを考えたデザイナーがすごいデザイナーと言われるようになります。

    やがてそんな消費社会も成熟・・・というか爆発的に成長していく生産力は、あっという間に人類が消費しきれないくらいのものを作れるようになってしまいます。

    モノが飽和して、少なくとも量的には満たされてしまいました。
    そうなると提供する製品やサービスの品質やクオリティと共に、企業という存在の社会的な意義も問われるようになってきました。

    かつてなら単に貿易会社、自動車メーカー、銀行、食品会社でよかったのですが、20世紀半ばにはどんな企業であるかを表現するようになっていきます。

    デザイン的にはCI(コーポレートアイデンティティー)とか呼ばれるものです。

    企業の存在価値をみずから定義し「デザイン」するようになります。

    今ならもう少し平たくブランディングと言っていいと思います。少し整理しますと、歴史的には「デザイン」と意識されていなかったものが大量生産とともに業となり、当初は有形のもののデザインばかりでしたが、やがて企業の存在意義と言った無形のものへとデザインの領域は広がっていきます。

    「デザイン思考」「デザイン経営」

    近年ではこの流れのなかからビジネス的になニュアンスの強い言葉も生まれます。皆さんも聞いたことがあると思いますが、「デザイン思考」や「デザイン経営」です。

    無形のものへと広がった「デザイン」の考え方を、ビジネスに生かそうというもので、デザイン思考は90年代にアメリカで誕生したフレームワークで、デザイン経営については2018年に日本の経産省が知財と絡めてもっとデザインを活用しようとそんなことを言いだしました。

    いずれも従来のプロダクトであったりファッションであったりグラフィックであったりと言った、形あるものを作るデザインではなく、概念や考え方、課題解決の手法として「デザイン」という言葉が使われ出しました。

    もともとデザインという言葉の意味としてあった「設計」というニュアンスからは遠くないのですが、我々の日常語としての「デザイン」の語彙としては、もっぱら実体のあるものの意匠を指す言葉と捉えている人が多いのではないでしょうか。

    いま「デザイン」を考えていると誰かが言ったときに、何か形あるものを考えているのであって、けして課題解決の道筋を考えているとは思わないでしょう。

    ユニクロなどの仕事で著名なデザイナーの佐藤可士和氏は「意味のデザイン」という言葉を使っています。企業ブランドをデザインすることはすなわち、企業の存在する意味、活動する意味、それに関わる人々が得られる価値があるとして、その価値を得る意味・・・といった具合に、概念をデザインするというニュアンスで使われています。

    私も「デザイン」が経営にとって重要な概念になりうるとは思っていますが、しかし、用語としての「デザイン」は少し混乱してしまっているように思えます。

    学術的な意味でのデザインと、一般的なニュアンスのデザインには乖離がありますし、やはり定義があいまいで混乱して用いられているという印象です。

    たとえば「デザイン経営」と銘打った企画でありながら、その内容はデザイナーと一緒に商品化逸発みたいな従来通りの有形物ありきのデザインの話であったりします。

    ちなみに経済産業省のデザイン宣言では「デザイン経営」のための具体的取組として以下のようなものがあげられていました。

    1. デザイン責任者(CDO,CCO,CXO等)の経営チームへの参画
    2. 事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
    3. 「デザイン経営」の推進組織の設置
    4. デザイン手法による顧客の潜在ニーズの発見
    5. アジャイル型開発プロセスの実施
    6. 採用および人材の育成
    7. デザインの結果指標・プロセス指標の設計を工夫

    ここでも、デザインを経営に取り入れればよい結果が得られるという捉え方で、デザインという言葉に対する定義そのものへの関心は薄いように見受けられます。おそらく、「デザイン経営という意味」のデザインを十分議論するような空気ではなかったのだと思います。

    しかし、デザイナーとしては、その前提条件にはこだわりたいです。我々もまた「デザイン」の「意味のデザイン」をしなければならないのだと思います。

    というわけで、引き続き「デザイン」の意味を考えていきたいと思います。

  • デザインにできること「#1 デザインに出来る事」

    デザインにできること「#1 デザインに出来る事」

    中小企業にとってのデザインとは何でしょうか?

    デザイン経営とかデザイン思考は一体何を意味するのでしょうか?

    そもそも、デザインはどう活用できるのでしょうか?

    中小企業にとってのデザインとは?

    デザインになにができるかをシリーズ「デザインにできること」で一緒に考えていきたいと思います。

    #1 デザインに出来る事

    まずはデザインが社会やビジネスのどんなシーンで活躍しているか、デザインのジャンル別に整理してみます。ざっと思いつくところですと、以下のような感じでしょうか。

    1. プロダクトデザイン
      • 家電・家具・日用品
      • ユーザー体験と機能性の両立
      • 素材・構造・製造プロセスとの関係
    2. 建築・空間デザイン
      • 店舗・オフィス・展示会ブース
      • 動線計画と空間体験
      • ブランドの世界観を空間に落とし込む
    3. ファッションデザイン
      • 衣服・アクセサリー
      • 機能性とスタイル
      • 流行と文化的背景の反映
    4. グラフィックデザイン
      • ロゴ・名刺・パンフレット・広告
      • 情報整理と視覚化
      • 印象形成と記憶への定着
    5. システムデザイン
      • サービスの仕組み・業務フロー
      • 顧客体験の向上
      • 人や情報の流れを最適化
    6. ウェブデザイン
      • ホームページ・LP・ECサイト
      • 情報設計とUI/UX
      • 集客とブランディングの両立
    7. 概念デザイン
      • 社会課題の解決
      • 新しい価値観・意味づけの創造
      • ストーリーテリングとの連動

    実は日常生活のあらゆるものにデザインがあるのが、現代のわれわれの暮らしです。おそらく、朝起きてから眠りにつくまで、デザイン性の無いものなんて、通勤中に遠くに目る山々とか、ランチで食べたプチトマトとか、帰り道にふと見上げた夕焼けとか、自然物くらいじゃないでしょうか。

    朝起きたときに視界に入るもののすべてがデザインされています。
    今や我々の身の回りのもので、デザインされていない人工物はないと言っても過言ではないでしょう。お子さんが小学校の工作で作った小物入れだってデザインですよ。

    身近過ぎて意識しないってレベルがデザインかもしれません。

    ファッションが好きなら、時計が好きなら、車が好きなら、アイドルが好きなら、それぞれのデザイン性に目が行くことと思います。

    中にはデザインが気に入ったからこの扇風機にしたとか、形がいいからこのゴミ箱にしたとか、ついパッケージで新しいお菓子を買ってしまったり、インスタ映えするカフェのランチをわざわざ並んで食べてみたり。

    デザインは日常でも仕事でも、リラックスたむでも、ピンチの時でも、とにかく今の日本社会はデザインにあふれています。

    救急車の警告灯もサイレンも、音も含めてデザインです。
    危機感を感じる音。遠くまで聞こえる音。雑踏に紛れてしまわない存在感。
    すべて、意図的に設計された「デザイン」です。

    居酒屋のメニューものデザインなら、電車のつり革もデザインです。

    目的があり、もしかすると意図的ではなく、居酒屋のおやじさんが経験で何となく書いているのかもしれませんが、デザインです。

    こんなに身の回りにデザインがあふれているのに、いや、あふれているからこそデザインを気にしなさすぎではないですか?

    というわけで、次はデザインという言葉の意味を考えてみます。