カテゴリー: ブランディング

  • デザインにできること「#3 デザイナー的思考??」

    デザインにできること「#3 デザイナー的思考??」

    前回はデザインという言葉について考えてみました。

    今回はさらに掘り下げて、デザイナー的思考について考えてみます。

    #3デザイナー的思考??

    先ほど経産省の「デザイン経営宣言」という取り組みを紹介しましたが、正確には特許庁なんですよ。要は独自サービスをどんどん作って知財をどんどん増やしなはれ、ということなんだと思います。それ自体は和割れれデザイナーにとっては歓迎すべきことですし、ぜひにも、どしどし取り組んでいただきたい。

    ですからなおのこと、より正確に言葉を把握していきたいと思います。

    この「デザイン経営宣言」はデザインのチカラを積極的に経営に生かそうという宣言エス。ブランディングして差別化とか、イノベーションとかデザイナーは基本的に他の人と違うことを考えるのが生きがいみたいな人が多いのでもってこいなんですよね。

    詳しくは経産省のホームページをご覧ください。

    >>兼参照サイト「特許庁はデザイン経営を推進しています」https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html

    ただ、ここで気になることが一つあります。

    デザイン経営ハンドブックなるものには「「デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための“デザイン経営”ハンドブック」は、デザイン経営のビジネスでの活用のため、「そもそもデザインシンキング(デザイン思考)とは何なのか?その意義と価値はどこにあるのか?なぜ、それがいま大事なのか?」に対する考え方や、デザイン経営を導入するにあたっての8つの課題などを具体的に記載しています。」と書かれているわけです。


    ここで「デザイン思考」という言葉が出てきます。

    「デザイン思考」は1990年代にアメリでフレームワークとしてまとめられたもののことを指すのが一般的です。デザインの思考についての研究はもっと古くからあり、さらに現代でも引き続きされているので、厳密にはいろいろ議論があるようです。

    一般的に「デザイン思考」はある一つのフレームワークのことを指します。検索するとデザイン思考についての書籍がいっぱい出てきますが、多くがその解説本になっています。

    デザイン思考は簡単に言いますと「答えのない課題解決に向いたフレームワーク」です。

    手順は
    1.人の話を聞く
    2.課題を定義する
    3.課題を概念化(分解?)する
    4.解決策の試作をする
    5.その試作をテストする

    で、テストの結果をまたヒアリングして、課題が解決していなければ未解決の部分を定義し、概念化し、試作し、再テスト・・・となります。

    ですので、デザイン思考はよく、プロダクトデザイナーが新製品を開発するときのプロセスを課題解決用にフレームワーク化したものと説明されています。

    つまり、デザイン思考とは、物事の解決手法を、デザイナーの思考法を分析した方法を使って、誰でも再現し、ビジネスなどに応用できるようにしたものです。

    つまり、デザイナー以外が使う可能性があることを前提なのです!!

    ゴルフのドライバーに「プロ」とかついているのと同じです。

    一般の方が使う前提の言葉です。

    ですが、デザイン経営とはデザイナーの能力を活用して問題解決・・・すなわり「目に見えるデザイン」を経営に活用することを中心に据えています。(もちろんそのプロセスで概念をデザインすることになるとは思いますが。)

    ですので、厳密には「デザイン経営」はべつに「デザイン思考」を前提に作られてはおらず、もうすこし広く捉えているようです。デザイナーの能力もデザイン思考も経営に有効活用して知的財産を増やしていく事で競争力を上げられるという感じなんだとおもいます。

    そういうことを推進するって事で経産省の公式ハンドブックにさえ言葉の混乱が見られるわけです。他の実例やコンテンツではデザイン思考にあまり触れていないので、本当に単なる言葉の定義の曖昧さゆえになのだと思います。

    ここで言いたいのは、言葉の定義にうるさそうなお国の取り組みでさえ、正確性を欠いているということです。それほど日本語に染み付いた「デザイン」という言葉の語感と、本来「デザイン」という言葉が持っている定義の広さには乖離があるという事です。

    たとえば、このデザイン思考を積極的にデザイン制作に取り込んでいるデザイン事務所もあります。またデザイン思考自体はわりと普通にデザイナーがしている思考でもあります。ですが、全てのデザイナーが知っている概念でもなければ、使っていないデザイナーもたくさんいます。
    デザイナーでさえ、デザインという言葉の定義は曖昧なのです。

    ちなみにですが、デザイン思考を説明できないデザイナーの方が多数派のはずです。デザイン学校でも習ってない人の方が多いと思います。

    ですので、デザイン思考を知らずにデザイン思考をしているデザイナーもまた多くいると思われます。独自のカスタマイズをした、そうですね、デザイナー的思考としておきましょう。

    あらためて、われわれデザイナーこそ、言葉の定義についてもっと発信していかないといけないと思いました。
    というわけで、どんどん発信してくと改めて決意を固くしました。

    次回は、われわれデザイナーから見て、中小企業でどうデザインを活用してほしいと考えているかについてです。

  • デザインにできること「#2 デザインという言葉」

    デザインにできること「#2 デザインという言葉」

    前回は初回ということで、デザインに出来る事を見てみました。

    今回はデザインという言葉について考えてみます。

    #2 「デザイン」という言葉

    デザインという言葉が現在のような意味で使われ出したのは産業革命以降と言われています。大量生産が始まってからです。
    ですが、デザインそのものはパルテノン神殿やピラミッドをみれば、紀元前何千年からはっきりした形であり、もっと以前の石器や土器にそのルーツは十分見て取れます。

    目的のために意図をもって造形をする。
    これは紛れもなくデザインです。

    ただ、当時の人々はそれを「デザイン」と思って仕事はしていなかったと思います。ただ目的のために、機能のために、祭祀のために、威厳のために、権威のために、神の祝福を受けるために作っていたのだと思います。

    それが、産業革命になると、モノづくりの仕組みが変わってきます。
    それまでは一つ一つ手作りだったものが、大量に生産し、それを一般市民が大量に消費していくようになります。

    また活版印刷などで紙媒体のコストも変わってきます。

    大衆文化の発展と共に、看板やポスターも発展していきます。

    その過程で、専業としてのデザイナーが生まれ、出版や広告業といった情報をあつかうビジネスも発展していきます。

    やがてそれはテレビやラジオにつながり、メディアと言われるものになっていきます。

    そのような過程があるため、いわゆるデザイナーの仕事は大量生産するものの費用対効果を考慮しながら意匠を作る者という、現在一般で思われているであろう定義になっていきます。

    ヒット商品をデザインしたデザイナーや、売り上げに貢献した広告を作ったデザイナー、価格破壊をするイノベーションを考えたデザイナーがすごいデザイナーと言われるようになります。

    やがてそんな消費社会も成熟・・・というか爆発的に成長していく生産力は、あっという間に人類が消費しきれないくらいのものを作れるようになってしまいます。

    モノが飽和して、少なくとも量的には満たされてしまいました。
    そうなると提供する製品やサービスの品質やクオリティと共に、企業という存在の社会的な意義も問われるようになってきました。

    かつてなら単に貿易会社、自動車メーカー、銀行、食品会社でよかったのですが、20世紀半ばにはどんな企業であるかを表現するようになっていきます。

    デザイン的にはCI(コーポレートアイデンティティー)とか呼ばれるものです。

    企業の存在価値をみずから定義し「デザイン」するようになります。

    今ならもう少し平たくブランディングと言っていいと思います。少し整理しますと、歴史的には「デザイン」と意識されていなかったものが大量生産とともに業となり、当初は有形のもののデザインばかりでしたが、やがて企業の存在意義と言った無形のものへとデザインの領域は広がっていきます。

    「デザイン思考」「デザイン経営」

    近年ではこの流れのなかからビジネス的になニュアンスの強い言葉も生まれます。皆さんも聞いたことがあると思いますが、「デザイン思考」や「デザイン経営」です。

    無形のものへと広がった「デザイン」の考え方を、ビジネスに生かそうというもので、デザイン思考は90年代にアメリカで誕生したフレームワークで、デザイン経営については2018年に日本の経産省が知財と絡めてもっとデザインを活用しようとそんなことを言いだしました。

    いずれも従来のプロダクトであったりファッションであったりグラフィックであったりと言った、形あるものを作るデザインではなく、概念や考え方、課題解決の手法として「デザイン」という言葉が使われ出しました。

    もともとデザインという言葉の意味としてあった「設計」というニュアンスからは遠くないのですが、我々の日常語としての「デザイン」の語彙としては、もっぱら実体のあるものの意匠を指す言葉と捉えている人が多いのではないでしょうか。

    いま「デザイン」を考えていると誰かが言ったときに、何か形あるものを考えているのであって、けして課題解決の道筋を考えているとは思わないでしょう。

    ユニクロなどの仕事で著名なデザイナーの佐藤可士和氏は「意味のデザイン」という言葉を使っています。企業ブランドをデザインすることはすなわち、企業の存在する意味、活動する意味、それに関わる人々が得られる価値があるとして、その価値を得る意味・・・といった具合に、概念をデザインするというニュアンスで使われています。

    私も「デザイン」が経営にとって重要な概念になりうるとは思っていますが、しかし、用語としての「デザイン」は少し混乱してしまっているように思えます。

    学術的な意味でのデザインと、一般的なニュアンスのデザインには乖離がありますし、やはり定義があいまいで混乱して用いられているという印象です。

    たとえば「デザイン経営」と銘打った企画でありながら、その内容はデザイナーと一緒に商品化逸発みたいな従来通りの有形物ありきのデザインの話であったりします。

    ちなみに経済産業省のデザイン宣言では「デザイン経営」のための具体的取組として以下のようなものがあげられていました。

    1. デザイン責任者(CDO,CCO,CXO等)の経営チームへの参画
    2. 事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
    3. 「デザイン経営」の推進組織の設置
    4. デザイン手法による顧客の潜在ニーズの発見
    5. アジャイル型開発プロセスの実施
    6. 採用および人材の育成
    7. デザインの結果指標・プロセス指標の設計を工夫

    ここでも、デザインを経営に取り入れればよい結果が得られるという捉え方で、デザインという言葉に対する定義そのものへの関心は薄いように見受けられます。おそらく、「デザイン経営という意味」のデザインを十分議論するような空気ではなかったのだと思います。

    しかし、デザイナーとしては、その前提条件にはこだわりたいです。我々もまた「デザイン」の「意味のデザイン」をしなければならないのだと思います。

    というわけで、引き続き「デザイン」の意味を考えていきたいと思います。

  • デザインにできること「#1 デザインに出来る事」

    デザインにできること「#1 デザインに出来る事」

    中小企業にとってのデザインとは何でしょうか?

    デザイン経営とかデザイン思考は一体何を意味するのでしょうか?

    そもそも、デザインはどう活用できるのでしょうか?

    中小企業にとってのデザインとは?

    デザインになにができるかをシリーズ「デザインにできること」で一緒に考えていきたいと思います。

    #1 デザインに出来る事

    まずはデザインが社会やビジネスのどんなシーンで活躍しているか、デザインのジャンル別に整理してみます。ざっと思いつくところですと、以下のような感じでしょうか。

    1. プロダクトデザイン
      • 家電・家具・日用品
      • ユーザー体験と機能性の両立
      • 素材・構造・製造プロセスとの関係
    2. 建築・空間デザイン
      • 店舗・オフィス・展示会ブース
      • 動線計画と空間体験
      • ブランドの世界観を空間に落とし込む
    3. ファッションデザイン
      • 衣服・アクセサリー
      • 機能性とスタイル
      • 流行と文化的背景の反映
    4. グラフィックデザイン
      • ロゴ・名刺・パンフレット・広告
      • 情報整理と視覚化
      • 印象形成と記憶への定着
    5. システムデザイン
      • サービスの仕組み・業務フロー
      • 顧客体験の向上
      • 人や情報の流れを最適化
    6. ウェブデザイン
      • ホームページ・LP・ECサイト
      • 情報設計とUI/UX
      • 集客とブランディングの両立
    7. 概念デザイン
      • 社会課題の解決
      • 新しい価値観・意味づけの創造
      • ストーリーテリングとの連動

    実は日常生活のあらゆるものにデザインがあるのが、現代のわれわれの暮らしです。おそらく、朝起きてから眠りにつくまで、デザイン性の無いものなんて、通勤中に遠くに目る山々とか、ランチで食べたプチトマトとか、帰り道にふと見上げた夕焼けとか、自然物くらいじゃないでしょうか。

    朝起きたときに視界に入るもののすべてがデザインされています。
    今や我々の身の回りのもので、デザインされていない人工物はないと言っても過言ではないでしょう。お子さんが小学校の工作で作った小物入れだってデザインですよ。

    身近過ぎて意識しないってレベルがデザインかもしれません。

    ファッションが好きなら、時計が好きなら、車が好きなら、アイドルが好きなら、それぞれのデザイン性に目が行くことと思います。

    中にはデザインが気に入ったからこの扇風機にしたとか、形がいいからこのゴミ箱にしたとか、ついパッケージで新しいお菓子を買ってしまったり、インスタ映えするカフェのランチをわざわざ並んで食べてみたり。

    デザインは日常でも仕事でも、リラックスたむでも、ピンチの時でも、とにかく今の日本社会はデザインにあふれています。

    救急車の警告灯もサイレンも、音も含めてデザインです。
    危機感を感じる音。遠くまで聞こえる音。雑踏に紛れてしまわない存在感。
    すべて、意図的に設計された「デザイン」です。

    居酒屋のメニューものデザインなら、電車のつり革もデザインです。

    目的があり、もしかすると意図的ではなく、居酒屋のおやじさんが経験で何となく書いているのかもしれませんが、デザインです。

    こんなに身の回りにデザインがあふれているのに、いや、あふれているからこそデザインを気にしなさすぎではないですか?

    というわけで、次はデザインという言葉の意味を考えてみます。

  • 意味をデザインする

    意味をデザインする

    われわれが「デザイン」という時は、まさにこの意味で使っているという動画があったので紹介します。

    この動画は多分、立命館大学の新学部のPR動画ですが、その前段で企業とデザインの話をしています。その部分を是非ご覧いただきたいです。

    「概念のデザイン」「経営者以外も重要」「意味=価値」「問題解決から離れる」「愛について考える」

    なかなか濃密な言葉が詰まっている動画です。
    全部じっくり語りたいくらいですwww

    「企業が存在する意味をデザインするのがブランディング」「正解を作っていく」「意思が大事」。

    こういうのって大企業だけのことだとお思いではありませんか?

    我々は毎年1名でも雇用をする規模感であれば、ほぼほぼ同じように機能するのがここで語られている「デザイン」だと考えています。

    この動画では度々、意味をデザインする。

    例えばビジョン、経営理念などわかりやすいと思います。

    この動画の最後のほうで可士和さんが「星を繋げてかに座を作る」という話をしていますが、まさにそれなんです。

    みなさんは星座の星を線でつないだ図を見て、あれがカニ?双子?オリオン?天秤?って思いませんでしたか?

    僕は強引だなと思ってました。
    でも、かに座はかに座なんです。

    まさに、意味の本質ですよね。

    意味そのものをデザインするとは、物事の価値観を作っていく事であり、それを宣言する事であり、周りに納得してもらうことなんです。

    Wikipedeiaによりますと、16世紀のヨーロッパの星座でかに座(Cancer)にロブスターの絵をあてているものもあるようです。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3%81%AB%E5%BA%A7

    ちなみに癌の英語、Cancerの語源でもあるそうです。
    癌が広がる様子がカニの足を広げる感じに似ていたからだそうです。

    まさに意味の本質は「その意味にすること」なんです。
    意味は作らなくっちゃならないんです。

    まず誰かが「この意味で使う」と決めてなくっちゃいけません。
    決めただけではだめでそれを明文化して宣言しなくてはなりません。
    宣言しただけではだめで、使っていかなくてはなりません。
    使っていくだけではだめで、広めていかなくてはなりません。
    他の人も使い始めて、ようやくその言葉の意味となります。

    企業のビジョンや理念、ブランディングと同じですね。

    つくるのも大変だとは思いますが、それを広めていくのはもっと大変です。
    ですが、経営陣以外がその意味を使い始めたとき、きっと自分たちの努力だけでは作れないものが生まれ始めているはずです。

    丁度この動画の話で、物流の例えが出ていましたが、意味をデザインすることの目的は、その意味を周りに活用してもらう事です。
    意味が価値を創り出していきます。

    デザインにはそういう力があります。

    このデザインのチカラを是非、広めていきたいです。


    余談ですが、AIがデザインに及ぼす影響について佐藤可士和さんが「ポジティブな方向にもっていかないといけない」と言っているのにちょっと安心。
    ぼくも聞かれればこういう表現を使うしかないなと思っているので、同じ意味で使っているのだと、勝手に思う事にしました。

    この裏には、デザイナーにとっては、放っておいたらネガティブな面が強くなるかもしれないという意味が隠れていると思います。

    これはデザイナーの話です。
    AIに出来ない仕事があるという話をしていますが、AIに出来ない仕事をするには相当に勉強しないといけないでしょう。

    一般の方には、ポジティブな影響のほうがはるかに多いと思います。
    デザイナーにはちょっとした試練の時代です。

  • 心からのざっくりワードは力強い

    心からのざっくりワードは力強い

    何気なく読んだネット記事にあったEVについての記事にあった文です。
    レクサスからテスラへの乗り換えを検討している消費者がインタビューに答えている。

    僕はそれを読んでとても羨ましくなった。

    それがこちら。

    「私は次は何に買い換えようかと常に新しいものを探し続けるタイプ。それが昔から習慣なんだ」

    原文の記事はこちら

    東洋経済「日本車からテスラ、そしてサイバートラックへ」アメリカで起きているEVシフト加速の現実
    https://toyokeizai.net/articles/-/888151?page=3

    記事の内容はどうでもいいのですが、なんと気持ちよい宣言でしょう。

    どうしてって聞かれて、「知らない。そういうタイプだからだよ。」って、いっそすがすがしいですよね。

    日本語訳されるまえはどう表現しているのかわかりませんが、そういうタイプで習慣だというのは自分でも否定しようのない性向があると言っているように聞こえますよね。

    でも実際、求める側は大抵これくらいシンプルなんですよね。

    基本的にニーズ側はシンプルなんです。

    でも、提供側はそうシンプルで入れません。

    別の人は「環境にどう対応しているかが大事だ。僕はいつだってそれを大切にしているんだ。」というかもしれないし、「直観的にこのデザインは乗るしかないと思ったね」というかもしれない。

    その商品やサービスの特徴にある程度幅を持たせていく必要が出てきます。

    もう面倒になってつい「あらゆるニーズにお応えします」といいくなります。

    でもそうすると主張がぼやけてしまうので広告はしにくくなります。

    テスラのこのトラックのデザインは確かに新しいです。ですが、ピックアップトラックに乗る誰もが新しいものを探しているわけじゃないので、これが唯一の正解というわけじゃないです。

    テスラはEVしか作らないのである程度方向性は限られますが、このデザインである必要はありません。それを決めるのがブランディングです。

    ある意味ブランディングは正解を探すのではなく、作っていく、決めていく行為です。

    企業のブランディングも同じで、社内外のニーズの一つ一つはいたってシンプルなことが多いのですが、集合となるといろんな可能性が出てきます。

    ブランディングは減点方式では決められません。

    100点の正解があって、そこに近づけようとするのではありません。

    加点方式です。

    一つ一つ決定を繰り返して、出来るだけ点を上げていきます。

    ですから、結果100点を超えるかもしれません。

    そこが難しいところです。

    ここまでやれば正解というのがなくて、それを正解と意思決定しなければならないのです。

    それは経営陣や従業員皆がこのテスラを欲しがっている方のように言えるようになることだと思います。

    たとえば「社会のために最新技術を追求する」というビジョンの会社があるとして、スタッフの一人が誰かになぜその事業に挑戦するのか聞かれたときに、「我々は社会課題を解決するために常に新しい技術を探し続ているんです。それが我々なんです」と言えれば素敵ですよね。

    企業文化のブランディングのゴールの一つがここです。

    ざっくりしたワードですけど、これが自分の言葉で出てくるといかにも力強いですよね。細かいことは言葉で説明できなくっても、やっている価値観が腹落ちしていれば「それが我々だ」って言える。

    そこが重要だと思います。

    だから、言葉を決めて配布するのはまだ入り口なんです。

    それがどう納得のレベルになっていくか。

    そこが重要なんです。

  • 素敵なブランドムービー「まだフォルクスワーゲンじゃない」

    素敵なブランドムービー「まだフォルクスワーゲンじゃない」

    すてきなブランドムービー!

    2年くらい前から使っているもののようですが、僕は最近見ました。

    誰かがつかなければフォルクスワーゲンは完成しないという価値観を

    まだフォルクスワーゲンじゃない

    という言葉にきゅっと集約している

    このワードを軸に展開して、あなたの人生にフォルクスワーゲンはありますか?と問うわけですよね。

    でもそれって、思い出を彩るそのシーンは絵になっているかっていう問いでもあり、家族や恋人に安心と快適さを提供しているかという問いでもあるし、その時の街の風景はどうだったという問いでもある。

    いろんなところに話は飛ぶけど、基本、ユーザーの体験に回帰するストーリーですよねー。

    ひとつ気になるのはあらゆる人がのれるようになるまではの部分かな。
    わからないけど、もともとなかったシーンじゃないのかな?

    と思って英語版を探してみたら、セリフの量がちょっと違った。
    英語版だとシーン切り替えが自然だった。
    50秒目の両親のところと、次のシーンが日本語の方がセリフがちょっと長い。
    だから次のシーンも少しセリフの頭が英語よりも遅い。
    makes us smileのsmileで黄色の車がちゃんとはまっていて気持ちがいいです。

    ↓英語版

    まぁ、それは細かい話で、そんなことはどうでもいいくらい素敵です。

    価値をデザインするって、きっとこういうことなんだろうなと思わせてくれる。

    これは大企業だから作れるってものではなく、中小企業でも、個人事業でも、趣味のクラブでも作れます。

    むしろ意思決定がシンプルな小さい組織の方が作りやすいんじゃないでしょうか。

    でも誰でも作れるわけじゃないです。

    デザイナーが勝手に頑張っても、それは嘘のストーリーにしかならないですから、このストーリーはどこかで文化のレベルまで昇華されていないと出来ないんじゃないのかなと思います。

    僕は自分の事業で、こんなムービーは作れないです。
    恥ずかしながら、それに耐えられる揺るがない価値観を持ち合わせていないですから。

    いつかはこんなムービーが作れるようになりたいものです。

  • スモールビジネスのブランディング

    スモールビジネスのブランディング

    ブランディングってどういう意味ですか?

    これから経営者として、責任者として、個人事業主として、もしブランディングに取り組もうとされるのでしたら、是非、ブランディングって言葉の定義があいまいだってことをまず覚えていてほしいです。

    いわゆるバズワードの一つだと思います。
    明確な定義はないけど、なんとなく雰囲気が伝わる言葉。

    デザイナーやコンサルが企画書で便利に使っている言葉。

    インフルエンサーや情報商材屋が持論を展開するために有効な言葉。

    「ブランディング」

    ググれば数多くの説明が出てきて、カタカナワードでカッコよく教えてくれる。私も仕事柄、本を読んだり、ブログを読んだり、動画を見たり、カタカナワードとじゃれ合ってきました。

    なんか、かっこいいですもんね。

    つい使いたくなっちゃいます。

    でも、考えれば考えるほど、そして使えば使うほど多面的な言葉だと思うようになりました。

    ここで、今現在の私の考えるブランディングを整理してみたいと思います。

    ビジョン

    ブランディングを調べたときに出てくるカタカナ。その中でひときわ異彩を放つのが「ビジョン」です。

    なんとも香しきも気高いワード。

    もうなんかすでにキラキラしています。

    そして「ビジョン」の従順なる従者「ミッション」。

    まだ物足りない人には「コアバリュー」を召喚しますか!

    どう違うの?

    私も、何度も調べました。

    いろんな解説があって、結局よくわかりませんでした。

    今では私なりの定義をしていますが、その定義が一般的かどうかはわかりませんし、伝わらないことの方が多いです。

    ただ言えることは、ビジョンってなんかかっこいい。もうこれは素晴らしいデザインのブランドバッグ、精密な意匠の高級腕時計、最小回転半径のやたらデカいSUVと並べても見劣りのしないステータスだと、私は本気でそう思っています。

    「あなたの会社のビジョンは何ですか?」

    その問いに対して熱く語ってくれる経営者のイメージは、ブレの少ない合理的な判断力と決断力、そして周りを率いる統率力を持っている方、というイメージです。

    なので、われわれデザイナーも注目します。

    特に会社案内やコーポレートサイトなど、その組織、法人そのものを表現するものを制作するときは、ビジョンがなくてもヒアリングでそれらしいものを探ります。

    社訓や社是では倫理観が中心になっていることが多いですが、もちろんそれも重要なものです。もしくは経営者個人の座右の銘からイメージを広げていく事もあります。

    ビジョンという形で明文化されていなくても、それに準ずるもの、どこに想いをもって経営していらっしゃるのか。

    それを探ることからデザインをしてく。

    僕はずっと、それが正しいアプローチだと思っていました。

    ですが最近、その考えを改めなければならないと思い始めています。

    AI・ノーコードが変えるリソースとコスパの関係

    従来からブランディングに関するデザイン制作や情報発信を内製化してコストダウンするという話はありました。ですが、必ずネックになるのがスキルです。人件費と言い換えてもいいかもしれません。

    デザイン制作はやはり専門的な技術が必要な分野です。その学習にどれくらい時間がかかるかがコストに直に跳ね返ってきます。一人前になるのに10年とか平気で言っていました。内製スタッフのデザインスキルのために10年も経験積ませるなんてことは、経営規模に余裕がないと出来ません。なので、スモールビジネスではどこまで内製化するかは常にシビアな問題でした。

    我々のサイト制作の提案でも、どこまでを社内でして、どこまでを外注にするかはとても重要なポイントです。

    30年前なら外注一択だったと思います。

    その後、ブログ、SNS、ネット印刷、クラウドのノーコードツール、スマホと技術が目まぐるしく拡張していって、最近はAIの話題でもちっきりです。

    これらの変化を図で表すと以下のようになります。

    簡単に言いますと、プロでなくては出来ない領域がへり、誰でもできる領域が広がりました。プロに頼んでコスパを出すには、ある程度難易度の高い事、専門的知見のいる事に限られていき、パソコンが得意、いやスマホを使えれば出来るってことがどんどん増えていっています。

    では、ブランディングはどうでしょうか。

    普通に考えれば、専門的な知見のいる領域です。

    しかし、ここにマーケティング的な成果を重ね合わせると変わってきます。

    従来ではコストの問題でできなかったマーケティング戦略が、AIやノーコードツールのおかげでできる可能性が出てきました。

    つまりは、デザイナーの経験によらなくても、手数とその分析というマーケティング的なやり方が極めて有効だと考えられるゾーンがどんどん拡張していっているのです。

    逆に言うと、従来はコストをかけないと十分な制作物が出来なかったため選択肢が少なかった。ですので従来の中小企業はブランディングではなく、体裁を整える必要がある時はデザイナー先生を召喚し、販促のためには広告を使うしかありませんでした。

    それが一番コスパが良かったんですね。

    状況が変わり始めるのがSNSとスマートフォン、ブロードバンドが普及し始める10年ほど前です。

    従来の手法とは違う選択肢がでてきました。

    それでも「デザイン」するには専用のソフトが必要で、そのための知識が必要でした。

    その状況を大きく変えようとしているのがAIです。

    2025年6月現在、今はまだそんなツールはありません。
    このあとどれくらいかかるかも正確にはわかりません。
    ですが確実に誰でも「デザイン」できる領域は広がっていっています。

    その変化がもたらすのが、上記のグラフです。

    従来ならコスパが悪くてできなかった戦略、「デザインを量産して手数を打つ」がどんどんできるようになっていっています。

    そこでは従来のブランディングではないブランディング戦略が可能になります。

    ビジョンやミッションではない、マーケティング主導のブランディングです。

    マーケティング主導のブランディング

    皆さんは「デザイン思考」という言葉をご存じでしょうか。

    まぁ、これもブランディングと同じバズワードの類に見えますが、一応ちゃんとした定義のある言葉です。

    といいますか、とあるデザイン系の学者というか経営者が提唱した概念で、ググると同じような解説ばかりちゃんと出てきます。

    デザイン思考では起点になるのはユーザーとの共感です。

    ビジョンやミッションではありません。

    ユーザーが何を望んでいるか?がスタートラインです。

    これと似たようなものにユーチューバー思考があります。
    これは今僕が適当に考えた言葉なので定義はありません。
    当たった動画が正解、当たらなかった動画が不正解、という検証をひたすら繰り返していく方法論です。

    どちらも、ユーザー主導です。

    この手法は行ってでは決まりません。
    いわゆるPDCAサイクルをどんどん回していくという手法です。
    打率2割でも人の倍打席に立つという考え方です。

    野球は9階までと決まってますが、ビジネスはやったもの勝ちですからね。

    さ、そこで先ほどの技術的な事情です。

    AIやノーコードツールの進歩で、ひとつの手数を打つためのコストが大幅に下がりつつあります。

    従来は外注して乾坤一擲の気功砲を一発はなっていたのが、これからは一人のスタッフが百裂拳を放つようになるわけです。

    PDCAサイクルとグルンぐるんに回せるんです。
    ターゲットも細かく選定できます。

    例えば、朝、昼、夜でチラシを変える。
    男性用、女性用で表現を変える。いや、もっと年齢も含めて細かく変える。SNSで使い捨ての期限の短い投稿を乱発する。
    従来ならとてもコストが合わなくってできなかったことが、できちゃうじだいがじわじわっとやってきています。

    ビジョンは不要か?

    結論から言えば、もちろんノーです。

    ビジョンが激烈に役に立つシーンがあります。

    それが組織化、チームビルディングです。

    多様性の社会、物理的なモノのあふれた社会では、人はもはや情緒なしには動きません。
    感情の時代です。
    共感がとても重要な時代です。

    スモールビジネスでもパッションが重要になってきます。

    でもパッションは属人的すぎます。

    一人の人間が全員を率いるというスタイルなら問題ありません。

    でも再現性や自律性のある組織運営を、チームビルディングをしていくには、社内外のステークホルダーに組織としての「パッション」を見える化していく必要が出てきます。

    それを僕は企業文化としてのブランディングと呼ぶことにしました。

    これが必要になるのは次の要素を満たす場合です。

    地域密着や消費者参加型のサービスなど人間関係を伴う「共創」を展開する場合。

    社員が自律的に企業運営に参加するような社内での「共創」を展開する場合。

    トップダウンでワンマン経営をするには必要ありません。それは社長の人間力だけで大丈夫です。社長の目の届かない範囲へと事業を広げていきたい時に、組織の関係者が共通認識として抱く、「価値観」もしくは「人格」を具現化する必要が出てくるわけです。

    これはPDCAサイクルがどうこうという話ではありません。

    エデュケーションとコミュニケーション、そのフィードバックから構築してくブランディングです。

    要はブランディングとは

    チームビルディングが必要ならビジョンが必要。

    マーケティングだけならユーザーに聞こう。

    まずはこの二つに要約できると思います。大企業も、マスも、中小企業も、個人事業も、口コミマーケティングも、どぶ板マーケティングも、SNSも。

    次に、

    チームビルディングなら丁寧に時間をかけて。

    マーケティングなら手数を打って。

    AI時代で内製化革命が進んでいけば、マーケティングのための手数に関するデザインコストが激変する可能性があります。

    でもチームビルディングをするなら、コミュニケーションにしっかり時間と手間をかける必要があります。

    全くと言っていいほど違いますので、もし皆さんが誰かのアドバイスを聞いてブランディングしようと思ったなら、その人がどういうニュアンスでこの言葉を使っているかに注視してください。

    そして言葉の定義の整理をまずしてください。

    そして是非、最適なブランディング手法に取り組んでください。